株式会社カカクコムが運営するレストラン検索・予約サービス「食べログ」は、訪日旅行者向けに多言語版サービスを展開しています。2025年11月のアプリリリースからわずか半年で累計200万ダウンロードを達成するなど、訪日旅行者が日本の飲食店を探し、予約する手段として利用が広がっています。

一方で、予約時に発生する3Dセキュア認証が、ユーザー体験上の大きな課題となっていました。 予約完了直前に表示される本人認証画面で約20%のユーザーが離脱していたのです。

この課題を解決するため、食べログ多言語版では次世代不正検知サービス「Sardine(サーディン)」を導入。 低リスクな取引では3Dセキュアを省略し、スムーズに予約完了できる仕組みを整え、カゴ落ち率を約20%から1%未満まで低減しました。

Sardine導入の背景や成果について、食べログカンパニー インバウンド事業部 部長 / プリンシパルプロダクトマネージャー 香西 利彦氏にお話を伺いました。

※掲載している企業情報および記事内容は、2026年4月末時点のものです。

課題
課題
  •  3Dセキュア認証の煩わしさ・不信感により、約20%のユーザーが予約直前で離脱 
  • 不正リスクが低い事業特性にもかかわらず、全件認証によるカゴ落ちで機会損失が発生
解決策・効果
Sardine導入の効果
  • 低リスク取引の3Dセキュア認証をスキップし、カゴ落ち率を約20%→1%未満に低減 
  • 予約時のユーザー体験が向上。アプリストアレビューでも「予約がスムーズ」との声を確認

訪日旅行者の「本当においしい店を探したい」に応える、食べログ多言語版

食べログ多言語版のサービス概要と事業としての位置づけを教えてください。

食べログ多言語版は、訪日旅行者をターゲットにしたレストラン検索・予約サービスです。

この事業を始めた背景には、訪日旅行市場の拡大があります。政府は2030年に訪日旅行者数6,000万人、消費額15兆円を目指しています(※1)。私たちとしても、食べログが持つ飲食店情報や口コミ、写真、ネット予約といったアセットを活用すれば、この大きな市場に対して価値を提供できるのではないかと考え、インバウンド事業に本格的に取り組むことを決めました。

サービスは2024年6月にPC・スマートフォンのWeb版からスタート。2025年11月にアプリをリリースし、2026年4月末時点で累計ダウンロード数は200万を超えています。多くの旅行者のニーズを満たしている手応えがありますし、事業としても非常に大きなポテンシャルを感じています。

食べログ多言語版の特徴は、日本のユーザーが日常的に利用している食べログの情報をもとに、訪日旅行者が「現地の人が実際に通っている店」を探せることです。観光客向けに作られた情報ではなく、日本のユーザーによる口コミや写真、評価をもとにお店を探せる点が支持されています。アメリカ、韓国、台湾、香港など訪日旅行者の多いエリアを中心に、英語、韓国語、中国語(繁体字・簡体字)など複数言語に対応(※2) しており、予約時にシステム利用料として1人あたり400円をクレジットカードで決済いただく仕組みになっています。

 (※1)日本政府(国土交通省・観光庁)が定めた「明日の日本を支える観光ビジョン」および「観光立国推進基本計画」における2030年の目標値  
 (※2)アプリの中国語は繁体字のみ対応

 

食べログ多言語版サイト

 

課題は“不正被害”ではなく、3Dセキュアによる予約離脱だった

 クレジットカード決済にて大きな課題があったとお伺いしています。 

3Dセキュアの認証プロセスにおいて、本人認証画面(チャレンジフロー)  が表示されたユーザーの約20%が予約完了直前に離脱していました。

食べログ多言語版では、予約時にクレジットカード登録を行います。予約内容を確認し、最後に決定ボタンを押すと、3Dセキュアの認証が走り、その後に予約完了へ進む流れです。このファネルをデータで確認したところ、3Dセキュアの工程で離脱が集中していることが明確に分かりました。全予約数の約20%がここで離脱しており、事業として見過ごせない大きな機会損失が生じている状態でした。

離脱の背景には2つの要因があると見ています。1つは純粋な煩わしさ。 旅行中にスマートフォンで予約している場面では、外部の認証画面に遷移し、ワンタイムパスワードを確認し、また予約画面に戻るという流れはかなり面倒です。もう1つは、不信感です。海外では、まだ食べログの認知度が日本国内ほど高いわけではありません。ユーザーからすると、よく知らないサービスを使っている最中に、急に違うUIの認証画面が出てくる。これがカード会社の画面なのか、食べログの画面なのかも分かりにくい。結果として「怪しいことを要求されているのではないか」と感じて離脱してしまう可能性があります。

そもそも、食べログのレストラン予約は換金目的の転売が発生しない体験型サービスです。他人のカードで予約しても予約者本人が来店しなければ意味がなく、不正犯に金銭的なインセンティブがない。本質的に不正リスクが極めて低いサービスにもかかわらず、全件3Dセキュアを通していたことが、大きな機会損失を生んでいました。

3Dセキュア運用パターン1の導入検討からSardineへ

不正検知サービス導入のきっかけを教えてください。

 約20%のカゴ落ちをなんとか解決できないかと、ベンダーに相談したり自分でも調べたりする中で、『クレジットカード・セキュリティガイドライン』に定められた3Dセキュアの運用パターンとして、網羅的な不正対策を講じていることを前提に、加盟店の不正リスク判断によって必要な場合にのみ3Dセキュア認証を実施する 『パターン1』という手段があることを知りました。

 【補足】EMV3Dセキュアの運用パターンについて  

 『クレジットカード・セキュリティガイドライン』は、クレジットカード取引の安全性向上を目的に、カード会社・加盟店・決済代行業者などの関係事業者が実施すべきセキュリティ対策をまとめたものです。同ガイドラインでは、EMV 3-Dセキュアの運用として以下の3つのパターンが定められています。 

パターン①(加盟店のリスク判断により認証を行う場合)

加盟店が網羅的に行う不正利用対策がEMV 3-Dセキュアと同等以上の不正抑止効果があることを前提として、加盟店の不正リスク判断によって必要な場合にのみ認証を行う。

パターン②(カード番号登録時に認証を行う場合)

カード番号登録時はEMV 3-Dセキュアによる認証を行い、決済時は加盟店の不正リスク判断によって必要な場合にのみ認証を行う。

パターン③(決済の都度、認証を行う場合)

カード番号登録時はEMV 3-Dセキュアによる認証を推奨し、決済時は都度認証を行う。

EMV 3-Dセキュアの具体的な運用

【出典】EMV 3-D セキュア導入ガイドより 

パターン1の実現方法を検討する中でDGBTの紹介を受け相談したところ、Sardineを導入することでパターン1の対応が可能になると説明を受け、他の不正検知サービスとの比較検討を経て導入を決めました。 

 Sardineを選んだ決め手は何でしたか。 

いくつか比較した中で、まずコスト面が合理的でした。そのうえで、不正検知の仕組みとしても納得感がありました。

Sardineは、入力フォーム上でのユーザーの操作を分析できます。フォームへの入力の仕方、コピー&ペーストの挙動、操作の流れといった行動データを見ることができます。さらに、サーバー側の情報についても、単純に送られてきたログを見るだけでなく、偽装されている可能性も含めて接続元を分析できる。ロジカルに考えて、必要十分な不正検知の仕組みだと判断しました。

DGBTの価値は、ツール提供だけではなく「パターン1の実現」まで伴走できること

DGBTに依頼して、特に良かったと感じた点は何でしょうか。

大きく3点あります。

1点目はクレジットカードや3Dセキュアに関する専門ノウハウです。事業会社にとって決済や3Dセキュアの導入は何度も経験するプロジェクトではなく、社内に経験者がほぼいません。 その点、DGBTは不正検知だけでなく、カード決済やシステム領域の理解が深く、フロントに立つ担当者がその場で専門的な回答を出してくれました。 ビジネスとエンジニアリングをワンストップで進められたことは、スピードに直結しました。

2点目は、 カード会社との調整支援です。パターン1を進めるうえでカード会社との調整・確認が必要になりますが、提示される条件が業界標準なのか個別条件なのか、こちらには判断する材料がありません。DGBTが他社実績や業界標準を踏まえてアドバイスしてくれたことで、フラットで適切な条件に整理しながら、契約や運用設計を進めることができました。

3点目は、社内の意思決定に関するサポートです。 当社の場合、不正検知そのものに強い課題感があったわけではありません。ですから、単に「不正検知ツールを導入します」と言っても、社内ではなかなか意思決定しにくい。重要だったのは、Sardineを導入しパターン1を適用することで、3Dセキュアによる離脱をどれだけ低減し、結果、どれくらいの売上インパクトが見込めるのかを示すことでした。DGBTが他社事例と食べログ多言語版のリスク特性をもとに効果試算を出してくれたことで、投資対効果を明確にできスピーディーに意思決定できました。

食べログカンパニー インバウンド事業部 部長 / プリンシパルプロダクトマネージャー 香西 利彦氏

導入後すぐに効果を実感。カゴ落ち率は約20%から1%未満へ

 導入から本番稼働までの流れはいかがでしたか。 

Sardineの実装自体は非常にスムーズで、開発でつまずいたことはありませんでした。 時間がかかったのはパターン1対応に向けた要件整理とカード会社との調整です。 どの要件を満たしているのか、追加で何を確認すべきかといった点を整理しながら進める必要がありました。ただ、これもDGBTに伴走してもらえたことで、スピード感を持って進めることができ、訪日旅行者が増加する春の需要期、特に桜のシーズン前という目標のタイミングにも間に合わせることができました。

 本番稼働後の効果について教えてください。 

リリース当日から明確にカゴ落ちの減少を確認できました。 Sardineによって、ユーザーの大部分を低リスクと判定できるようになり、ほとんどの決済でチャレンジ認証なしでフリクションレスに通せるようになりました。その結果、約20%発生していたカゴ落ち率は、1%未満まで低下。想定通りの売上インパクトも出ています。

数値以外では、UXの改善を実感しています。ユーザーにとっては認証が出ずスムーズに予約できることが当たり前であり、事業者側はその当たり前をつくることが重要です。アプリストアのレビューなどでも「予約が非常にスムーズだった」という声をいただくことがあります。もちろん、それがすべてSardineやパターン1による成果とは言い切れませんが、予約完了までのフリクションを一つずつ減らしていくことは、ユーザー体験に確実に効いていると感じています。

 不正検知は、売上を落とすものではなく、売上機会を守るもの 

 今後のSardine活用や、同様の課題を抱える企業へのメッセージをお聞かせください。 

不正検知という言葉には、どうしても「怪しいユーザーをブロックする」「コンバージョンを減らす代わりに安全を得る」というイメージがあると思います。

しかし今回の取り組みを通じて感じたのは、不正検知にはもっとポジティブな側面があるということです。私たちにとってSardineは、単に不正を止めるためのツールではありません。安全な取引を見つけ、安全なユーザーには余計な負担をかけず、スムーズに予約してもらうための仕組みです。

特にインバウンドや越境ECでは、ユーザーの国やカード発行会社、利用環境が多様です。一律で強い認証をかけると、正規のユーザーまで離脱してしまう可能性があります。だからこそ、「不正対策=ブロックを増やす」という発想から、「安全な取引を見極めて、いかにフリクションレスを実現するか」という発想へ切り替えること。不正検知は守りのコストではなく、予約体験を改善し、コンバージョンを増やすための投資になり得る。今回の取り組みは、それを実感したプロジェクトでした。

 

【関連サービス】

・次世代不正検知サービス「Sardine